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「シャッターがおりる、中は安全だよ」― HARPERS ROMO の中でこう歌われるとおり、ふとその心地よさにハマると、あたたかい毛布の中みたいに抜けられなくなるハイ・ラマズ。私は、それまで名前は耳にしていたものの、5枚目となる『スノーバグ』で、初めてまともに音を聴いた出遅れ組である。いつ果てるともなく漂い続ける音。何を主張するでもなく語りかけてくる、どこかなつかしい感じのする歌…。どう考えても、いつもスタンディングのライヴで跳ねまくってる自分とは対極の音だ。実際、レコード店で試聴した時も、何だかふわふわしてて、買うほどでもないと一度は素通りしてしまった。だけど、これが疲れた時やおやすみ前には、最高のBGMになってくれるのだ。 果たしてあのほんわかワールドは、生だとどうなるのだろう。たとえばマーキュリー・レヴみたいなちょっとサイケデリックなトリップ? それなら、ビールもおかわりして酔っぱらいかげんで聴いた方がいいかな。いつもライヴの前には、よく知らないバンドでも、多少なりとも曲名を覚えてから来るのだが、彼らの音の気持ちよさには、もうそんなことどうでもよくなっていた。時は3月になったばかりの日曜日。クアトロまでの道々に感じる春の暖かさまでぴったりで、何だかうれしくなってくる。 ところが、ショーン・オヘイガンを含め6人がクアトロの狭いステージに登場し、いざ始まってみると、そこから弾き出される音量は、意外にも大きくて、とても夢うつつとはいかない。何よりあのふわふわのベールをいっさい剥ぎ取ったかのように、一つ一つの音がくっきりと粒立ってキラキラしているのが印象的だ。いつもはタバコの煙と汗でどろどろのクアトロの空気も、今夜は何と澄みきっていることか。 ギターやバンジョーその他、楽器を何度も持ち替え、コーラスを入れ、さっきまでギターを弾いて歌っていたショーンがピックを口にくわえ、合間に脇のキーボードで何フレーズか入れ、ピコピコ打ち込みが入り…なんて調子のステージを見ていると、かるーく聞き流せそうな気持ちのいい音も、何気なく作っているようでいて、実はとんでもなく手間ひまかかっているんだということがよくわかる。去年見たブライアン・ウィルソンも、誰もが楽しめそうな‘60Sのポップスながら、実際に生で再現されたGOOD VIBRATIONSなどは、とても複雑な構成の曲なんだと感心させられたっけ。 HARPERS ROMOや COOKIE BAY、そして、ショーンが身体を揺すってとりわけ気持ちよさそうにギターを弾いていたJANET JANGLE。旧作も交えつつ、なごやかに進んだステージは、アンコール3曲目、CUT THE DUMMY LOOSEでいったん客電がついたものの、鳴り止まぬ拍手に再び暗転。再度のアンコールに大いに盛り上がった。 熱く人を煽るような音を出すには、もちろんエネルギーがいる。だけど、ただそこに漂っているだけのような心地よい音にも、見えない部分できっと同じぐらいエネルギーが必要なのだ。「根性入れてリラックス!」― 『スノーバグ』のライナーにあった小山田圭吾くんのコメントにも思わず納得の一夜であった。
Reported by 小谷育代. |