NINE INCH NAILS at 東京ベイNKホール in Tokyo(2000年1月10日)
狂騒と孤独のなかで
 1999年、ようやく産み落とされた最期のモンスター・アルバム『ザ・フラジャイル』。すべてが終わった後で鳴らされたようなその音は、ゆっくりとロックの未来をこじ開け、泥だらけの靴のままで歩き続けることを選んだトレント・レズナーそのものであった。

 そして2000年、ついに初来日初日を迎えた東京ベイNKホールでのライヴ。それはそれは圧倒的なまでに美しく、暴力的で完璧なロックンロール・サーカスだった。冒頭の「サムワット・ダメージド」をトレントが口ずさみはじめると場の空気は一変した。 完全なる祝福と他に類を見ない狂気が渦巻いているのがはっきりとわかる。天井から氷柱状に刺さってくるような蛍光灯と巧みなライティングが効果的に配置され、会場の空気は一気に沸点を突破し、トレントはひたすらエキサイトしていく。

 さらに「マーチ・オブ・ザ・ピッグス」、「ピッギー」と『ダウンワード・スパイラル』 からの曲をはさんでみたり、「ラ・メール」、「ザ・グレイト・ビロウ」では印象的なピアノのリフとスクリーンの映像が見事に音と融合し、素晴らしい視聴覚効果を生んだ。 初期衝動にまみれた以前のステージングとは一線を画す計算されたショウが展開され、いよいよアンコールへと突入する。「世界が逝った日」、「スターファッカー」、「クローサー」という必殺のメドレーから、ラストは歴史的な名曲「ハート」。

 全てを失ってしまい、自らを傷つけることでしか自分自身の存在意義を見い出せな い男。彼のオーディエンスとは対照的な温度の低い眼差しの先には一体何があるのだろうか。

 君と僕/世界がふたつに割れても/僕の最期まで/君の最期まで
     (WE'RE IN THIS TOGETHER)

 とても実現不可能なほどの濃密なコミュニケーション願望と分かっていながら、それでも世界にシャウトし続ける彼の立ち姿はあまりにも孤独で、何よりも神々しかった。

Reported by オシカワ ナオキ.


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