ケイティ・タンストール

KT Tunstall

"Drastic Fantastic"
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定例 : これを見逃すな!

これからツアーに入るバンドや来日するアーティスト



ケイティ・タンストール

- ケイティ・タンストールに吹く風 -


「ここに、ベータ・バンドを知ってる人はいる?」……東京のライヴでそんなMCがあったというのを撮影をしていたカメラマンのIzumikumaさんから聞いて、それはそれは笑ってしまった。続けて、ケイティはジ・エイリアンズのゴードン・アンダーソンのリアルな近況なんかもしゃべっていたという。この話題にピンときた人はどれくらいいたのだろうか? 来日公演も真っ最中なのだけれど、そんな関わり合いについてどうしても書いておきたい、と思わずこれを書いている。

 ケイティ・タンストールのバイオグラフィーを見ると、セントアンドリュースにいた頃を、不遇の時代として書かれていることが多いけれど、彼女はこの時期にフェンス・コレクティヴ(※1)の面々と出会っているのだ。ケイティ・タンストールはケニー・アンダーソンの弟であり、キング・クレオソートとして活動していたこともある、イイン・アンダーソンと一時期バンドを組んでいたこともある。ケニー・アンダーソンのもう一人の兄弟がジ・エイリアンズのゴードン・アンダーソンで、ゴードンはザ・ベータ・バンドの初期メンバーで、ちょうどケイティと同世代なんていう系図ができ上がっていくのだ。フェンス・レコーズは商業主義を一切排除した完全家内工業的な自主レーベルで、届くCDも市販されているCD-Rにスタンプが押され、スリーブも手作り、一度売り切れれば再発なしという形のCDが数え切れないくらいリリースされている。設備の整ったヴェニューでのライヴも当然あるけれど、バーやレストランの一角を自分たちのライヴスペースとしてプレイしていることも多い。その光景と、本当のケイティ・タンストールの姿が重なり合うできごとが去年の夏にあったのだ。

 スコットランドで開催されたコネクト・ミュージック・フェスティヴァルに行った帰り、グラスゴーで電車の時間を待ちつつ、休日の昼下がりでにぎわう中心地を歩いていると、アコースティック・ギターを持った女性とすれ違った。どこかで見たことがあるなと思い振り返ると、その女性はおもむろに歌い出した。その女性はケイティ・タンストールだったのだ。告知などされていないスペシャルな路上パフォーマンスであったのか、みるみるうちに彼女を取り囲むように人の輪ができていった。声やギターの音を拾うためのマイクなんてないし、足ではチープなタンバリンでリズムを取っているじゃない。お膳立てされた歌姫が特別待遇され、自分の仕事が終わればさっさとその場を去るのかと思えば……拍子抜けするくらいあっけらかんとしていて、"次はどの曲をやってほしい?"なんて、自分のライヴ・スペースを作り上げていった。その有様はは歌姫という形容からはほど遠く、たくましい三十路女といったところ。

 興味深いのは、セントアンドリュースにいた頃に、実際にケイティ・タンストールがフェンス・レコーズからリリースしたことはないのだけれど、ケイティ・タンストールが拠点をロンドンに移してからも、キング・クレオソートのセカンド・アルバム『ケーシー・ルールズ・オーケー』にケイティ・タンストールが参加していたり、ライヴにゲスト出演していたり、少し前のケイティ・タンストールのUKツアーには、キング・クレオソートがサポート・アクトとしていっしょに回っていたりすることだ。それぞれ音楽を通して表現する内容は違えど、根幹にしっかり確立されたスコットランドのフォーク・ソングを感じることができる。それはケイティ・タンストールとキング・クレオソートを両方聴いてみると、理解してもらえることだと思う。

 ケイティ・タンストールを「歌姫」と形容するのはどうなのだろう? 『ドラスティック・ファンタスティック』スパンコールのような輝きを表現したかのようなジャケットに違和感を覚えてしょうがないのは私だけなのだろうか? 決してこれはケイティ・タンストールを批判する意味ではなく、彼女が潜在的にもつ魅力を打ち消してしまっているように感じるからだ。映画『プラダを着た悪魔』の主題歌はケイティ・タンストールが歌う”サドンリー・アイ・シー”で、映画そのもののシンデレラ・ストーリーとキラ星のように現れた歌姫、ケイティ・タンストールが重なりあい、多くの女性を虜にした感もあるけれど、シンデレラ像の向こう側にある、裸のケイティ・タンストールを理解したいのなら、ぜひともフェンス・レコーズのアーティストの音楽も聴いてほしい。来日公演も残すところ明日の大阪だけになってしまったけれども、チャンスがあるならぜひ会場に足を運んでほしい。

(※1)フェンス・レコーズを主宰するキング・クレオソートのケニー・アンダーソンを中心としたフェンス・レコーズに所属するアーティストやそのアーティストによるイベントなんかを指す。主にスコットランド東北部のアーティストが多く、グラスゴーとはまた違った音楽シーンを確立している。他にジェームス・ヨークストンやピップ・ディラン、ジョン・ホプキンスをはじめとしたアーティストが所属している。アンダーソン3兄弟の父はビリー・アンダーソンというスコットランドのアコーディオン奏者であるといった具合に、数珠つなぎは果てしなく続くのである。


written by kuniko
Kuniko's works

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button2008

button狼少年が描く世界:スフィアン・スティーヴンス(21st Jan. @ 心斎橋クラブクアトロ)
button完全敗北宣言:カリブー(13th Jan. @ 代官山ユニット)


button2007

button無意味にこそ意味がある:ホット・チップ (2nd Sept. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
buttonジェットコースターに乗ってゴスペルを:ポリフォニック・スプリー (2nd Sept. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
button音を楽しむということ:プライマル・スクリーム (1st Sept. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
buttonステージとオーディエンスとの距離:キング・クレオソート (31st Aug. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
button1娘+3親父=スコットランド:ティーンエイジ・ファンクラブ (1st Sept. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
buttonジェットコースターに乗ってゴスペルを:ポリフォニック・スプリー (2nd Sept. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
button偉人の幻影を観た:ジ・エイリアンズ (31st Aug. @ コネクト・ミュージック・フェスティヴァル 2007、インヴァレアリー・キャッスル)
buttonキング・クレオソートがいるべき場所:キング・クレオソート (29th Aug @ バー・アンド・キッチン、ロンドン)
buttonCD review : ビー・スティングス:ビー・エム・エックス・バンディッツ(14th May.)
button時間を経て確立された揺ぎないバンドの軸:ザ・クーパー・テンプルクロース(10th Apr. @ 心斎橋クラブクアトロ)
buttonCD review : アストロノーミー・フォー・ドッグス:ジ・エイリアンズ(24th Mar.)
buttonCD review : ペーパークリップス・アンド・サンド:ジョー・マンゴー(9th Feb.)
button飾らないオトコ達の職人芸:キャレキシコ(19th Jan. @ 福岡ソウル・バード)
button2006

button歌い手は酔いどれがちょうどいい:アラブ・ストラップ(14th Dec. @ 京都メトロ)
buttonCD review : ザ・ハッピー・ソング:ジ・エイリアンズ(19th Oct.)
button地中に張り巡らされた根:モハーヴィ・スリー(7th to 8th Oct.)
buttonザ・グリーンマン・フェスティヴァル特集 : サーキュラスジ・エイリアンズグリフ・リースキング・クレオソートバート・ヤンシュキャレキシコ洞窟でのスペシャル・ライヴ - グリフ・リース (18th to 20th Aug. @ グラヌスク・パーク、クリックホウウェル、ブレコン・ビーコンズ国立公園)
button再び輝きを : ジ・エイリアンズ(25th Aug. @ ナイト & デイ、マンチェスター)
buttonイッツ・ア・ショウ・タイム : コールドプレイ(15th July @ インテックス大阪)
button無防備の産物 : ベル・アンド・セバスチャン(1st Jun @ 大阪なんばハッチ)
buttonCD review : ブラック・ゴールド : キング・ビスケット・タイム (30th May)
buttonCD review : エリアノイド・スターモニカ EP : ジ・エイリアンズ (8th May)
button裸の王様はだあれ? : アークティック・モンキーズ (2nd Apr. @ ゼップ大阪)
button間と呼吸感、そして全てが確信犯 : ザ・ホワイト・ストライプス (9th Mar. @ ゼップ大阪)

button2005

buttonThe Coralは男の約束を果たしに帰って来たのか? : ザ・コーラル (5th Dec. @ 難波ハッチ)
button新しいスタンダード、新しい10年の始まり : オアシス (17th Nov. @ 大阪城ホール)
button生命在るモノのチカラ : Super Furry Animals (20th Oct. @ 心斎橋クラブクアトロ)
buttonCD review "Best of the Beta Band" : ザ・ベータ・バンド (16th Oct.)
button五月蝿いとはこういうことをいう : Scissor Sisters (26th Feb. @ 心斎橋クラブクアトロ)



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