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この原稿のきっかけは朝霧'06のポーグス…ではなく直前の転換BGMである。何故か最近ウチで増殖していく田舎の祭り囃子達がここぞとばかりにかかったからである。軽く例を挙げれば、上々颱風の"しぶ茶でCHA CHA CHA"やソウル・フラワー・ユニオンの"海ゆかば 山行かば 踊るかばね"などなど。ポーグスのシェイン・マガゥアン本人が選曲したって噂もチラホラですが、とにかくすんごく楽しいんですよ。それでは祭り囃子を数珠つなぎ。
■The Clovers, Junior
去年の朝霧ジャム以来、アイルランドのトラッドを取り込んだパンク「パディービート」が、一般レベルにまで浸透してきたように思える。ポーグス、フロッギング・モリーの生み出す楽曲たちは日本の祭り囃子に似た調子で押し寄せ、するりと体に入ってくるからなのだろう。ポーグスら欧米を愉しむのもいいけれど、日本産のパディービートも捨てたもんじゃない、と気づかされた巡り巡って一年ぶり(そらそうだ)の朝霧ジャム。ニッポン再発見、そのすべての発端はポーグスの前後でかかった粋なSEのせいである。探してみれば、先に挙げたバンド達をリスペクトしながらどこか馴染みの香りがするヤツらがいる。音作りから「和」に重きを置き、"桜露来歌(おうろうらいか)"に"朽チ果テナイ唄"、とシングルカットされる曲達には民謡出身かと思わせるタイトルをはめ、名前に負けないアレンジで花を咲かせるクローヴァーズに、大真面目に遊んでしまったアルバム『聖ビッチ小学校唱歌集』を完成させたジュニアらがおもしろい。どちらも飛ぶ鳥落とす日本産パディービートの筆頭というのではないけれど、日本ならではの独自性という意味では抜きん出ているのではないだろうか。朝霧で流れていたのはジュニアの「ウサギ追いし〜」でお馴染み"故郷"だったし、滝廉太郎の"荒城の月"など音楽の教科書に載っていた楽曲をカバーし、ページの隅の申し訳程度に描かれた挿絵と共に、調子っ外れのリコーダーで演奏「させられた」ほろ苦い記憶を思い出す。当時、少しでもパディービートを知っていれば、リコーダーからティンウィッスルへとかく楽しい縦笛人生のきっかけになったかしれないのに、などと思ったりしてしまう。
祭りを探しにクローヴァーズのHPを掘ってたら、ヒョコッと出てきたvsタートル・アイランド…チェックした時には対バンは終わっていた。悔やんでも、後の祭り。
■Turtle Island
大阪の友人に教えてもらった愛知のタートル・アイランドは圧巻だった、といきなり過去形なのはマウント・システム(10/22 @ お台場)でようやく見ることができたから(toddyが書いてます)。知った当時、東京ではまだまだなのに、東海〜関西のアンダーグラウンドではかなり評判らしかった。地方出身者にとって東京以外で話題になっているのは何となく嬉しいものだが、見れないのはやっぱりちぃと悔しく、とにかく「ヤバイでぇ〜」としか言わない/言えない友人の言葉に無限の想像が膨らんでいたのだ。いざ見たそのライブは和どころかインドも絡んで、小さなステージにギター、ベース、ドラムス、サックス、桶胴太鼓、シタール、篠笛(連が繰り出すような祭りでお馴染みの横笛)などなど… とまとまりのない構成だけれど、ありとあらゆる隙間に音を塗り付け、瞬間を創造しては楽しんでいる感じがする。かつて「デストローイ!」と始まった3分たらずのハードコアバンドの残党が深化し、ライブ開始間もなくあれよと生まれる宇宙を目の当たりにして見れば、西で話題をさらって膨張するのも真っ当だ。自らを斑(まだら)と呼び、各人がバラバラな個であり、その性格や思想のどれもが混じりあわないという自負があれど、ひとたび演奏が始まり手元から旋律や叫びが離れてゆくとどうだろう、パンクスからハッピ姿のチョンマゲまで様々な人間が思い思いの大騒ぎをして、バラバラといいつつも弾む空気の中で渾然一体となってしまう。大所帯であるがゆえライブを見れる機会が希少なので、近くに来た時は足を運んでみよう。フェスだろうが海岸だろうがアスファルトだろうが、そこには必ず祭りが出現するはずだ。
written by taiki
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