|
連載リレー・コラム - 第2回
これを聞かずに、死ねるか!
誰にだってあるだろう、宝物のような歌やアルバム。 そんな歌やアルバムのことを話してみよう。
|
ロックの世界への架け橋
音楽は大キライだった。興味がないとかを通り越して本当にキライだったのだ。今でも思い出すのが、高校に進学した時、迷わず美術を選択して希望が通った時のあの安堵感。「ああ、これで一生音楽なんかと関わらずに済むんだ」とすごくホッとしたのを覚えてる。本当の話ですよ。大体オレん家にはレコードやCDのプレイヤーさえなかったんだから(注・ビンボーだったわけではない。親の名誉の為に、念のため)。
それがどういうわけか30歳を目前にした今現在、音楽は寝食以上に生活の一部としてしっかり定着しております。人生なんてわかんねえもんだねえ。一体どこがターニング・ポイントになったのか自分で過去を振り返ってみてもはっきりしない。「ラジオからマンフレッド・マンが聴こえてきた瞬間涙が止まらなくなり、ロックンロールに目覚めてしまった」なんてヒロトみたいなことを言ってみたいもんだけどさ。ま、誰の人生にもそんなドラマばかりが起こるわけではないのだよ。
ただ、節目節目でポイントになったレコードはさすがに思い出せる。それはビートルズだったり、デヴィッド・ボウイやスプリングスティーンだったり、なぜかマンハッタン・トランスファーだったり、あるいはスウェードだったりハイ・スタンダードだったりするわけだが、今日紹介したいのはエルヴィス・コステロの3rdアルバムだ。これはすごい。どうすごいかをこれかから説明する。
ニュー・ウェイブ色が強くてやたらに時代性を感じさせるってのもあるが、強烈な印象として、全般的にめちゃくちゃキャッチーなのだ。鍵盤の音色が弾み、甘い歌メロに美しく絶妙なバック・コーラスが彩りを添える。ちょっと「重め」のロックを好む人にはおそらくまるで受け入れられないほどのポップ・テイスト。そもそもが大衆向けのコステロの作品群の中でも群を抜いての聴きやすさがここにはある。数年前のシブ路線曲・「She」の大ヒットで初めてこの人を知った人には、ちょっと信じられないほどの作風だとさえ思う。
十代の終わり頃、周りが聴いてる音楽といえばボン・ジョヴィやガンズといった声のカン高いHR/HMばかりで「やっぱロックって苦手だなあ」となんだか嫌悪感を抱いていた自分に、救いの手を差し伸べてくれたのがコステロだった。あのまま音楽をキライでいたら、世の中に溢れている素晴らしいミュージシャンとの出会いの数々をずっと無視してしまっていただろう。この超甘口の一枚は、正にその意味でオレにとってロックへの架け橋であり救世主でもあった。
蛇足だが、一応最後に聴き所を。未だにライブ定番曲の1と13、ハモりと皮肉な歌詞が秀逸な3、そしてボーナス・トラックに収められたライブ録音曲が素晴らしい。特に"ALISON"ピアノ・バージョン。観客の興奮っぷりを聞いているだけで鳥肌が立つ。ヤバい。
written by joe
|
|
|