いかすぜ、マイトガイ、小林旭 - part1 -
なぜアキラで、裕次郎じゃないのか... 言葉では説明できない。でも、幼少の頃からずっとそうだった。確かに、裕次郎も好きだし、今じゃ、誰も覚えていないかもしれない、めちゃくちゃ値段の張る純金コーティングのCD(音がいいだのなんだのといわれていたと思うが、本当がどうかは知らない)『NOSTALGIA』も持っている。(俺の持っている純金コーティング・ヴァージョンはもう手に入らないようで、ナレーション入りの廉価盤がでているようだ。いずれにせよ、オリヴァー・ネルソン監修、ベニー・カーター指揮で裕次郎がスタンダードを歌ったこれは、宝物「JAZZ」アルバムだ)映画だって、何本も見た。
それに、日本のジェームス・ディーン、赤木圭一郎にも魅力を感じる。なにせ、58年にデビューしてあっという間にスターになったと思ったら、61年2月にゴーカート試乗中に鉄扉に激突してこの世を去ったという意味でも、強烈な印象を残している。まぁ、ノスタルジックな想像力の産物かもしれないけど、赤木圭一郎もめちゃかっこいい。それでも、なぜか、アキラなのだ。どうしてもアキラなのだ。
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といっても、小林旭は今年でデビュー50周年。確かに、筆者自身すでに半世紀近く生きてきている親父だが、さすがにアキラは同時代ではない。まぁ、かすってはいるんだが、その「かすり」が大きかった。なにせ、筆者は終戦から10年後の生まれ。国民のほとんどが貧乏丸出しで、当然ながら、我が家も例外ではない。その幼少時代にメディアを通じたエンタテインメントなんて皆無に等しかった。唯一あったのはラジオ。ほとんど記憶にないのだが、なんでも『赤胴鈴の介』が始まる時間になると真剣な表情で聴いていたらしい。テレビなんて金持ちしか持っていないから、近所の家で『チロリン村』を見せてもらったり... と、そんな時代だ。
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©日活株式会社
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あの頃、まるで遊園地にでも行くような感覚だったのが映画で、親父とお袋に連れられて何度も映画を見に行ったという話は聞かされた。親父に言わせると洋画を中心に見ていたそうなんだが、なぜか鮮明に記憶に残っているのは小林旭。子供心に彼のかっこよさがたまらなかったんだろう。ギターを背中に、なぜか馬に乗って離れていくシーンが脳裏に焼き付いて離れないでいる。今思えば、まんま『シェーン』(アラン・ラッド主演の傑作西部劇映画)なんだけど、これが強烈だったのさ。 |

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まぁ、かなりの年齢になって、アキラの『渡り鳥シリーズ』を見てみると、映画のなかに当時の自分と同じような年齢の子供が登場してたり、なぜか、アキラが演じる滝伸次が子供を大切にして、子供に好かれるという設定になっている。ひょっとして、それが理由なのか知らないが、世の中にこれほどかっこいいお兄ちゃんはいないんだというほどにあこがれていた。なんでもシンガーソングライター、というか、フォーク演歌手というか、昨年のフジ・ロックで強烈な印象を残してくれた巨匠、三上寛(『ひらく夢などあるじゃなし』は必聴よ)が、出身地だという青森県北津軽郡小泊村か、あるいは、その近辺の映画館で小林旭を見て『俺も、小林旭になる』と歌い出したという噂を聞いたことがあるが、全然おかしくない。違和感もない。ひょっとして筆者自身がこうやって音楽に関して原稿を書き、写真を撮影し、そして、アルバムなんぞを作ったりしているのもこのあたりがルーツかもしれないとも思えるほどだ。
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その子供時代から10数年後、確か、高校生の頃と記憶するが、どこかで小林旭の記憶がかすれていこうとしたときに、また、彼の唄に出会うことになる。当時、はまりにはまっていた友部正人が、なんとライヴで歌ったのが『さすらい』(『アキラ3』に収録)だった。おそらく、『びっこのポーの最後』(このアルバムは『差別語』狩りにあって発売禁止にさせられて、しばらくしてから1976という名前で再発されている)が発売された頃かなぁ。友部の歌う『さすらい』に涙を流した記憶がある。『大阪へやってきた』で頭をぶん殴られて、『にんじん』で、友部正人から逃れられなくなって、突き刺さるような言葉を持つ彼の唄に参っていたというのに、それとは全く違った世界にあるような小林旭の唄にはまってしまったのがこのときだった。後に気付くのだが、このときの友部と同じように旅や放浪の唄がやたらと出てくるのがある時期のアキラ。それは、まるで放浪するように全国を歌い歩いていた友部の生活そのままであり、そういったところがあのライヴでの演奏になったんだろう。
*(と、この段落を書いた翌日、なんと銀座での試写会帰りにばったりと10年ぶりに友部正人氏に再会。一緒に食事して話を聞いたところ、あれは三上寛の影響で『にんじん』のしばらく後のことらしい。それにしても、こんなことってあるのね)
それからまた10数年... 今度はもっと長いかもしれないが、ある夜、渋谷にある友人の発行する雑誌の編集部でパーティをやっていたときに出会って話をすることになったのが東京スカ・パラダイス・オーケストラの冷牟田氏。ちょうど彼らが小林旭と共演した頃で、彼らが小林旭の魅力に気づいて、『アキラ節』を形にしてくれたのが嬉しくて嬉しくて... 当時、日本の歌謡曲の傑作をスカ化するアルバム制作を狙っていただけに、ちょっと悔しい想いもしながら、冷牟田氏と嬉しいアキラ談義をしていたものだ。
その数年後に元はっぴぃえんどの大瀧詠一監修の下、4枚のシリーズで小林旭のアルバムが廉価盤で発表され、同時に大瀧詠一と小林信彦責任編集の下、小林旭読本―歌う大スターの伝説も出版されている。当然ながら、すべてを買い求めてここで再び小林旭の魅力を再発見することになる。このアルバムを聴いてみれば一目瞭然なんだが、昭和30年代にすでに「日本のロック」が完成されていたことに気づかされるし、奥の深い小林旭の世界に感動するのだ。
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2004
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